【短編】好き、です。
始まりは些細なことだった。
稲沢の仕事が遅いから、私がLHRを仕切ったのだ。
なんでも自分が仕切らなければ気が済まない性格の稲沢にとって、その出来事は不快以外の何ものでもなかった。
それからというもの、私は稲沢に目をつけられ、頻繁に嫌がらせを受けるようになった。
最初は足をひっかけたり、私のことを見ながらひそひそと会話をするなどの幼稚なものばかりだった。
しかし、私が平然としているのが気に入らないのか、段々と行動はエスカレートしていった。
教科書やノートは置いて帰ると元の状態では返ってこないし、机の中にゴミを詰め込まれていたりもする。
それが一カ月も続いている。
よくもまあ飽きないものだ。
逆に関心してしまう。
他のクラスメートはどうなのかというと、
遊びと思って楽しんでいる者もいれば、クラスの中心にいる稲沢に逆らえずに見ているだけの者もいる。
つまりは、誰もこの幼稚な遊びを止めようとしない訳である。
そこまでされても私が反応を示さないのは、ただ面倒くさいからだ。
だからそれ以外には何も思わない。