【短編】好き、です。
「大丈夫で…」
あ、
「あれ?雫ちゃんじゃん…って、どうしたの⁉︎なんでそんなびしょ濡れなの⁉︎」
たった今私とぶつかった葵先輩は、私の格好を見て驚きの声を上げた。
次の授業が体育なのか、制服から体操着に着替えている。
…なんでこうも一番会いたくない人に会っちゃうかなぁ。
いろいろと精索されても困るし、ここは早く立ち去るに限る。
「水道が壊れてました」
簡潔にそれだけ言い残し、足を…
踏み出そうとしたのだが、腕を掴まれ引き戻された。
「そのままいたら風邪ひくから」
頭の上に、ふわりと何かがかけられた。
甘い花のような先輩の匂いが鼻を通る。
そして、なぜか葵先輩は私の頭を軽く撫でてから走り去っていった。
予想外の行動に少し嬉しくなってしまったのは本当だ。
だが、すぐに私は思い出した。
……元はと言えば先輩のせいだよな?