【短編】好き、です。
いつもは音楽室を出て私とは違う方向に行く先輩。
なのに、何故だか今日は私の横に並んで、私と同じように速歩きをしている。
「あ、掃除場所変わったんだー。今日から西棟の国語科準備室!」
チッ、
近いんだけど。
バレないように小さく舌打ちをして顔を歪める。
私を見つけて話しかけられでもしたら面倒くさい。
……色々と。
まぁ、あと1週間もすれば私の掃除場所も変わる。
それまで逃げきれ、私。
最高時速で掃除場所に到着し、ドアを開けて中に入る。
その動作に無駄なものは一切なかったと思う。
何せここは女子トイレだ。
いくら彼奴でも入ってはこれまい。
優越感に浸りながら用具入れからモップを取り出した。