理屈抜きの恋
「その言い方、なんか生々しいですっ!」
「何でだよっ!」
素早いツッコミに思わず笑ってしまうと、副社長も笑ってくれた。
「やっぱり撫子には笑顔の方が似合うよ。」
そう言うと私の手から麦茶の入ったグラスを取り、それをローテーブルに置いた。そしてゆっくりと優しく身体が包み込まれる。
「撫子のせいじゃない。」
「でも…」
同じようなことが2度も起きるなんて、偶然とは考えにくい。
しかもそこに共通するのは私だ。
私と関わるとロクなことにならないのだろうか。
次は副社長が?
「俺なら大丈夫だ。」
心の声が言葉に出たのかと思った。
抱き締められた腕が和らいだのを機に、視線を合わせるように身体を起こすと、副社長の大きな手が優しく頬に触れた。
「撫子は俺のことが好きだろ?」
コクッと首を縦に振り答える。
「俺も撫子が好きだ。でも、撫子にとって俺よりも幸せにして貰える相手が現れたら、その時はちゃんと送り出す自信がある。」