理屈抜きの恋

「その言い方、なんか生々しいですっ!」

「何でだよっ!」

素早いツッコミに思わず笑ってしまうと、副社長も笑ってくれた。

「やっぱり撫子には笑顔の方が似合うよ。」

そう言うと私の手から麦茶の入ったグラスを取り、それをローテーブルに置いた。そしてゆっくりと優しく身体が包み込まれる。

「撫子のせいじゃない。」

「でも…」

同じようなことが2度も起きるなんて、偶然とは考えにくい。
しかもそこに共通するのは私だ。
私と関わるとロクなことにならないのだろうか。

次は副社長が?


「俺なら大丈夫だ。」

心の声が言葉に出たのかと思った。
抱き締められた腕が和らいだのを機に、視線を合わせるように身体を起こすと、副社長の大きな手が優しく頬に触れた。

「撫子は俺のことが好きだろ?」

コクッと首を縦に振り答える。

「俺も撫子が好きだ。でも、撫子にとって俺よりも幸せにして貰える相手が現れたら、その時はちゃんと送り出す自信がある。」

< 159 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop