理屈抜きの恋
「それはどういう意味ですか?私の気持ちがその程度だと思っているんですか?」

好きになった人は副社長が初めてなのに。

「そうじゃない。俺自身、撫子が俺を好きでいてくれる限り、撫子を離すつもりは毛頭ないし。ただ万が一、撫子を離さなくてはいけなくなったとしても俺は今と変わらないでいられる、って事を言っておきたいんだ。」

「どうして?」

「撫子の悲しい顔なんて見たくないから。」

最高の告白だと思った。
ただ好きだ、と言われているのとは訳が違う。
私を想ってくれる、その想いが嬉しい。
すごく嬉しい。
胸に温かいものが広がり、目から涙が溢れる。

その涙を優しく拭ってくれる手に自分の手を重ねるとその手をしっかり握りしめてくれた。

「最上の事はな、実は少し前から知っていた。」

「え?」

「最上は営業部のエースだろ。成績が急激に落ちている事に気が付かないはずがない。」

副社長が知っているということは当然、営業部長は知っているし、もしかしたら社長も、会長だって知っているかもしれない。
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