理屈抜きの恋
そうなると個人の問題ではなくなってしまう。

「異動になったりしませんよね!?最上くんは営業の仕事が大好きなんです!お客様とだってすごく良い関係を築いているんです!私の大事な、大事な同期なんです。」

私の切羽詰まった言い方に副社長は驚いたように目を見開いたけど、すぐに真剣な目に戻り私を真っ直ぐ見つめてくれた。

「大丈夫だ。」

たった一言だけだったけどその力強い言葉に不思議と安心感が広がる。
まだ何も解決したわけではないけど、気持ちが幾分楽になった。
副社長の胸元におでこを寄せると身体ごと包み込んでくれた。

「初めて好きになった人が本宮副社長で本当に良かったです。」

「おいっ!このタイミングでそういう事を言うのは反則だぞ!」

その慌てように顔を上げると、副社長の顔は真っ赤で。

「あの~前から気になっていたんですけど、副社長って恋愛経験ないんですか?」

「…」

「あ、やっぱりそうなんですね。よく赤面しますもんね。社内の女性に冷たいのだって本当は苦手なだけなんでしょう?あれ?でも、前に女には困っていないって言っていましたよね?あれはどういう……んっ」

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