理屈抜きの恋
「失礼します。」
室内に入って来た最上の姿を見て驚いた。
撫子が衝撃を受ける訳だ。
ソファに腰掛けさせても視線を上げようとしない。
入社初日に撫子と並ぶ姿を見た時にはその若々しさと眩しい程の魅力に嫉妬さえ覚えた程なのに、今、目の前にいるのはまるで別人。
「最上。俺を見ろ。」
そう言って初めて顔を上げたが、焦点が合わない。
暗く冷たい表情に寒気を感じるなんて普通じゃない。
「何があった?」
唐突過ぎたかもしれないけど、この状態を見てそう言わない方がおかしいだろう。
「最近よく同じ事を聞かれるのですが、俺は元々こんなんです。」
どういう事だ?
元々こんな感じだと?
「俺が知っている君はもっと溌剌としているように見えたが、それは見間違いか?」
「見間違いではないと思いますが、俺は元々こんな感じの暗い人間なんです。」