理屈抜きの恋

『私も初めての試験で、物凄く緊張しているんです。同じですね。でも悔いのないようお互い頑張りましょう。』

その台詞が功を奏したのか、撫子の笑顔が良かったのか、最上の頭脳の明晰さかは分からない。
でも、筆記試験に落ち着いて対応することが出来、帰り際、また偶然会った撫子にお礼を伝えることまで出来た。

『一緒に就職出来ると良いですね。』

その一言と笑顔に完全に落ちたと言う。

次に会う根拠などどこにもなかったのに、次に会う時までに撫子に相応しい男になるべく短時間で努力した。
その結果は、入社試験にも良い方向に働き、それは入社してからも続いた。

「運命だと思いました。」

そう思うのも無理はないだろう。
俺だってパーティー会場で会った時に運命を感じた位なのだから。

「今でも撫子が好きか?」

その問いには答えなかった。
質問を変える。

「活力源が無くなってしまったから、元の姿に戻った訳か?」

「それもそうですが…彼女の事もあります。」

「例のキスを迫った女か?」

ロクな奴じゃないと思うが、何故か撫子は悪く言わない。
そこもなんとなく引っかかっていた。
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