理屈抜きの恋

「俺に出会わなければ、彼女は今でも撫子の事が好きだと思います。」

「ん?ちょっと待て。言っている意味が分からない。」

「研修中にお世話になった事をきっかけに撫子は彼女を姉のように慕っていました。彼女の方も懐いている撫子のことが可愛くて仕方ない、という感じでした。ただ、それが俺の存在で変わってしまったんです。」

人気者の最上に近付こうとしても近付けない女性が多い中、撫子と仲良くしていた事で関われるようになった彼女は、優越感に浸るようになった。
でも、撫子には勝てない。
それに気が付いた時、可愛くて仕方ないのなかった撫子でさえ、邪魔な存在になった、という訳か。

「外村さんの事はご存知ですか?」

「あ?ああ。知っているが、それも関係しているのか?」

「あれだって元を返せば俺のせいなんです。彼女は撫子に彼氏が出来れば俺が撫子を諦めると思った。だから撫子のことを気にしていた外村さんに『撫子があなたのことを好きだって言っている』と伝え、撫子に彼氏を作らそうと画策したんです。」

「それを知っていてどうして止めなかった?」

「止めましたよ!外村さんに『撫子には好きな人なんかいない』って何度も言いました。でも俺が撫子のことを好きだったのを知っていたから嫉妬して言っているだけだと思ったようで…。」
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