理屈抜きの恋
怒鳴るようにして追及すると、最上は身体を縮ませて小さな声で言った。

「写真です…」

「写真?何の写真だ?」

「分かりません。」

「分からないって…。それは身を売るほどのものなのか?」

「分からないからっ!分からないから身を売るしかないんです。それに『この写真、ばら撒かれたらあの子は終わるわ』なんて言われてしまったら、どんな写真であれ、守るのは当然でしょう?大好きな、俺を変えてくれたかけがえのない大切な人を守るにはそれしか方法はなかったんですっ!」

最上が膝に頭をつけるように身体を折り曲げながら叫んだ時、『バン』と勢いよく扉が開いた。

「撫子…と鵠沼!?」

撫子には朝一で鵠沼の所に書類を届けさせるよう伝えていた。
車を使えば早いが、電車を使う撫子に、往復3時間の道のりは大変だから午後出社で構わない、と言ったはず。
それなのになぜもう戻って来た?
時計に目をやればまだ10時。
鵠沼も存在も疑問だし、何よりタイミングが悪すぎる。
よりによって最上のいる時間に戻ってくるなんて。
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