理屈抜きの恋
「早くしないと俺の車、違法駐車で捕まっちゃうよ。だから乗って。」
そう言われてしまうと乗らざるを得ない。
鵠沼さんに助手席のドアを開けてもらい乗ると、その直後、バス待ちの女性たちから悲鳴が上がった。
「あの方たちって鵠沼さんの会社の方ですか?」
「そうだと思うよ。この時間利用するのは会社の人間が多いから。」
やっぱり。
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「私なんかを助手席に乗せたことが社内で広まったりしたら、ご迷惑になりませんか?」
「全然。むしろ嬉しいかな。俺の彼女、美人でしょ?って、自慢しちゃう。」
カラッと明るく笑ってくれると、気持ちがすごく楽になる。この前も同じだった。
でも、こんな風に甘えて良いものではない。
「すみません。」
「謝らないでよ。俺、今でも神野さんのこと好きだけど、涼が真剣に恋をしたこと、嬉しく思っているんだから。」
「そうなんですか?」