理屈抜きの恋

「諒はさ、恋愛感情が欠落している、って大学時代からみんなに言われていたんだ。でもそうじゃなかったんだよな。本当に好きな人に出会わなかっただけなんだ。で、諒とは上手くいっているの？」

「あ…はい。多分。」

「アハハ。多分？多分って何？」

喧嘩しているわけではないし、私が副社長を好きだということに変わりもない。
ただ、副社長の考えが分からないことはある。今日みたいに。

「何か悩んでいる？神野さんも恋愛初心者っぽいもんね。俺のことは気にしなくていいから、恋愛マスターかつ涼の友人である俺に話してみなよ？」

「恋愛マスター？」

「そ。俺、恋愛大好きなの。別れたり、振られたりするのは辛いけど、幸せな時もある。そういう感情の起伏を一気に味わえるのって恋愛だけでしょ？それが俺的にはすごい刺激になるんだよね。」

恋愛を刺激と捉えられる鵠沼さんなら、副社長との話しをしてみても良いような気がした。

「今日…どうして私がこの書類を届けなければならなかったのでしょうか？」

「ん？あぁ。そういえばそうだね。急ぎじゃなさそうだし、わざわざ秘書に送らせなくても郵送すればいいもんね。」