理屈抜きの恋
「午後出社で構わない、とも言われました。それって午前中、私が居られては困る何かがある、ということではないかと思っているんです。」
「う~ん。それはどうかな?可能性の一つとしてはあるかもしれないけど。何か根拠はあるの?」
「本宮副社長は社外からも人気で、縁談の話が出ています。」
社長が何度となく副社長にお見合い写真を持って来ていた。
忙しい事を理由に断り続けていたのだけど、それなら会社に訪ねさせる、とまで社長が言い出した。
それが本当に実行されるかどうかは分からないけど、社長が言っていた『会社の為にもなるから』というセリフが頭から離れない。
「なるほどね。それが心配なんだ?」
黙ったまま頷くと頭にポンと手が乗せられた。
「このまま戻って確かめてみよう。ウジウジ考えていたって始まらない。」
「え?でも仕事は?」
「俺は涼ほど忙しくないし、超優秀なおじさん秘書が付いているから半日くらい外出しても大丈夫だよ。よし。そうと決まれば行くよ~!」
車は途中でUターンして、そのまま高速に乗った。
「ね、もし覗いてみて女がいたらどうするの?」
「本宮副社長が自身で望み、そして私よりも本宮副社長のことを幸せに出来る相手ならきっぱり諦めます。」