理屈抜きの恋
抱き締めていた腕を解くと、撫子は自分の席にある予定表を持って来た。
こういう時でも仕事となると切り替えの出来る撫子は逞しい。
仕事に支障が出たのは俺に好きだと言ってくれたあの日1日だけだった。
俺なんて気が付けば頭の中は撫子一色で、すぐに仕事どころじゃなくなってしまうのに。

「えっと、14時に来客があり、15時から会議があります。今日はその会議が終わり次第、それで終了です。」

時計に目をやれば時間は12時。
昼食の時間だが、お互い腹は減っていないだろう。

「話したい事がある。」

その言葉に表情が険しくなった撫子だったが、ソファの方へと手招きすると、それに素直に従い、俺の隣に腰かけた。

「撫子。」

「はい。」

「さっき、先輩とやらに会った。」

「小田先輩に?」

そこで聞かされた話は最上の話とまるで違う話しだった。

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