理屈抜きの恋
「涼さん。」

「な、なんだ?」

「ごめんなさい。」

「え?」

なぜこのタイミングで謝られているんだ?
最上を振ったんじゃないのか?

「正直に言います。私、最上くんの想いに心が揺れました。」

なんだ。そんなことを気にしているのか。
180度回転して撫子の方に顔を向けると、撫子は俯いていた。
その顔を上げるように顎に手を添えると、潤んだ瞳で見つめられた。

「うっ」

その顔は卑怯だ。
ただでさえ俺を選んでくれたことが嬉しくて抱きつきたいのを堪えているっていうのに。
思わず顔を逸らしてしまうと、勘違いした撫子はまた顔を下げてしまった。

「すみません。本当にすみません。もう涼さんを想う資格、ないですよね。」

「そんなことはない。あれだけの想いだ。揺れて当然だと思う。俺だって最上には適わないかもしれないって思ったくらいなんだから。」

「本当ですか?」

「あぁ。本当だ。それにこうして俺の元にいてくれる、それだけで十分俺は嬉しいんだ。」

「では、こんな私でもまだ好きでいてくれますか?彼女でいても良いですか?」

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