理屈抜きの恋
「な…?!」

「ダメ、ですか?」

「いや…いいけど、本気か?」

「何が?」

「いや…なんでもない。でも、次はないと思ってくれ。」

何の話をしているのか全く分からない。
話がかみ合わないと言うのかなんというのか。
こういう所も親子揃って、だ。
でも、レストランに着くまでも、着いてからもきっちりエスコートしてくれた。

「やっぱり慣れているんですね。」

「何に?」

「女性の扱いに、です。」

「そんなの何の役にも立たないけどな。」

涼さんみたいに素敵な男性にエスコートされて嫌な気持ちになる女性はいないと思うけど。

「どうして役に立たないなんて言うんですか?」

「俺は…」と涼さんが言い掛けた時、シャンパンが運ばれてきた。

「ん。」

「あ、はい。」

会話は中断され、目の前にシャンパングラスが掲げられた。
そこに私のグラスを当てると、鈴の音のような綺麗で透き通った音が個室内に響いた。

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