理屈抜きの恋
「わ。美味しい!」

「それは良かったな。料理も美味しいぞ。」

「来たことあるんですか?」

「あぁ。前に来たよ。女と。」

「女…?」

その言葉に固まってしまう。
女性慣れしているのは知っていても、いざ涼さんの口から女の存在を聞かされるのは初めてだ。
でも、私にそれを追及することは出来ない。
黙ったままシャンパンを一気に煽ることで嫉妬を飲み込む。

「追加で頼む?」

「いいえ。結構です。」

「ん?何怒っているんだよ?あ、もしかして嫉妬してくれた?」

「してくれた?ってなんですか!?ていうか何で笑っているんです?」

もやもやした気持ちを涼さんに当てつけるのは間違っているけど、気持ちを見過ごされ、そこを笑われると立場ない。
プイッと横を向くと「ごめんごめん」と謝られた。

「俺だってな、嫉妬して欲しいんだよ。」

「え?」

「エスコートだって今までみたいにスマートにやりたいのに、撫子の前じゃ上手くいかないから…ってこんなこと言わすなっ。」

真っ赤になって照れた涼さんを見たら胸が暖かくなった。
そして自然と口角が上がる。

「やっぱり違う。」

「あ?」

「涼さんは他の誰とも違います。」

「何が?」

頭で考えるよりも先に感情が、愛情が溢れてくる。

それが最上くんを選ばなかった決定的な理由。
愛情を抱けるのは涼さんだけだ。

「涼さんと出会えて本当に幸せです。」

「撫子…次はないって言ったよな?もうダメだ。さっさと飯食うぞ!」
< 207 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop