理屈抜きの恋
なぜだか急に焦り出した涼さんは給仕してくれるボーイさんを呼び出し、コース料理を一気に全部持って来てくれ、と頼み始めた。
そしてフレンチにしてはありえない光景が目の前に広がる。

「あの~普通、1品1品出てきますよね?」

デザートまで机の上に所せましと乗っている。
アイスでなかったのが救いだけど、1品ずつ味わうのが醍醐味なのに、これでは何かが違う。

「どれが前菜ですか?あ、これ?じゃあこっちは?あ~もう!どのフォークを使えばいいか分からないじゃないですか!」

「うるさいな。ごちゃごちゃ言うな。どのフォークも似たようなものだろ。そんなことはいいから早く食え。」

「どうしてですか?ちゃんと味わいたいです。こんな高級なお店、めったに来ること出来ないんですから。」

「そんなもん、撫子が望みさえすればいつだって連れてきてやる。だから早く食え。」

「だから何でですか?ゆっくり食べさせて下さいよ。」

「じゃあ、逃げるなよ?」

上目使いに見てくる涼さんの視線にドキっとする。

「約束だからな。」



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