理屈抜きの恋
「えっと…?」

「約束したよな?」

食事を終え、帰るべく、タクシーを呼び、乗り込んだのは良いけど、着いたのは自宅ではなく、真美ちゃんが式を挙げたホテル。

「ほら。降りるぞ。」

「ど、どうして?」

「初めて会った日に言っただろ?いずれ貰うって。」

『いずれ貰う』

それはあの日、足を痛めた私を介抱してくれたホストの言葉。
まさか覚えていたなんて。

「ほら。おいで。」

腕を引かれ、タクシーから降りる。

「本当に?」

「何が?」

「本当に泊まるんですか?」

「嫌か?」

嫌なわけではない。
むしろこうなることを望んでいたし、密かに準備はしてきた。
首を横に振ることで答えると、涼さんは優しく微笑み、私の手を取った。

「じゃあ行こうか。」

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