理屈抜きの恋
手を引かれて連れて行かれたのは最上階にあるスイートルーム。

「うわ~!広い!テレビ大きい!バスタブ大きい!部屋の中に部屋がありますよ!夜景も見られるし!スイートルームってこんなに贅沢なんですね!」

一通り室内を見て回り、涼さんの元へと行くと、スイートルーム慣れしている涼さんに笑われた。

「それだけ感動してくれると払い甲斐があるよ。」

「ここ、高いんでしょうね…」

「そんなこと気にするな。それより先に風呂入ってくるか?」

「あ、いえ。先にどうぞ。私、親に連絡しますので。」

「分かった。終わったら入って来てもいいからな。」

入れるわけないのに、余裕そうに微笑む涼さんがずるい。
親に連絡するのだってドキドキなのに。

でも、お母さんは気楽な感じで、『お母さんも久しぶりにお父さんとデートしようかな。』と言ってくれた。

その一言でだいぶ気持ちに余裕は出来たけど、親と話すのにこんなに緊張したのは生まれて初めてで、通話が終わってもしばらく携帯の画面をぼんやり眺めていた。

「ふう。」

「許してもらえたか?」

「わっ!涼さん?出てくるの早くないですか?」

「シャワーだけだから。あ、撫子は浴槽に湯張ってあるからちゃんと温まるといい。」

「涼さんもちゃんと温まって下さいよ。それに髪…乾かさないと風邪引いちゃいますよ?」

「撫子が入っている間に乾かすよ。浴槽にはあとで撫子と一緒に入る予定だし。」

「何言って…!もう、ちゃんと乾かして下さいね。入って来ますから!」
< 210 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop