理屈抜きの恋

「撫子?聞いている?」

「うわぁ!耳元で話し掛けないで!それに近いっ!」

真っ赤になる私を笑う最上くんはいじわるだ。
最上くんのような素敵系男子に接近されて赤くならない女子なんていないというのに。

「俺とゲームをしよう。」

「ゲ、ゲーム?それならこれから始まるよ?」

会場内の照明はだいぶ暗くなってきた。
そろそろ始まることはその雰囲気でなんとなく分かる。

「それとは違うゲームだよ。そうだな、俺の名前が呼ばれたらこのあと二人で抜け出して飲み直すっていうのはどう?」

最上くんのような素敵な男性からそんな風に誘われて嬉しくないわけがない。
ただ、嬉しい反面、戸惑いもある。
ゲームを理由に誘われている、ということは、からかわれている可能性を否定できないし、万が一、好意だとしても二人だけで抜け出したことが知られたらあっという間に社内で噂になってしまう。

今は薄暗くて分かりにくいけど、周囲の最上くん狙いの女性たちは社内でも社外でも、いつでもどこにいても最上くんを探しているんだ。

そんな人たちと関われば無駄にゴタゴタするのは目に見えているし、色恋沙汰で仕事がやりにくくなることは考えただけで憂鬱。
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