理屈抜きの恋
残念だけど二人きり、というその取引ゲームは出来ない、と伝えようと振り向こうとしたら、背中に温かい感触がした。
「え?ちょっと、最上くん?」
「さっき、撫子が男に声を掛けられているのを見た。」
「お、男?」
「長身の茶髪の男と話していただろ?」
「あぁ。」
本宮涼、というホストのことか。
あれ?
そういえば、あの人、どこに行ったんだろう。
「撫子?」
「え?あ、ごめん、何?」
「俺、撫子が他の男と話しているのを見ると頭がおかしくなりそうなんだ。他の男のことを考えている撫子を見るのも嫌だ。撫子の名前が呼ばれたら諦めるから、俺の名前だけが呼ばれたらこのあと、一緒に過ごして欲しい。」
「え?」
「俺だけのものにしたい。」
暗がりで背後から抱き締められているという状態だけでドキドキするのに、何だ、この展開は。
急展開過ぎて頭がついていかない。
「二人きりになりたい。」