理屈抜きの恋
「うん。それよりどうしたの?今日は早いね。」

私は、通勤ラッシュを避けるためと、机の拭き掃除をするために普段から早めの時間に出勤している。
反対に最上くんは通勤ラッシュを避けるために就業開始時間ギリギリの電車に乗ってきている。だから、この時間に顔を合わすことはめったにないのに。

「今日は新しい副社長が来る日だから?」

「いや、副社長の就任なんて平社員の俺には関係ないよ。」

それもそうか。

「じゃあ、どうしてこんなに早いの?」

不意に立ち止まった最上くんを少し振り返りそう聞くと、「撫子に話が合って。」と言われた。

その思い詰めたような表情にハッとする。

「話って…昨日のこと?」

「電話、どうして出てくれなかったんだ?」

やっぱり。
昨日の今日なのにここまで言われなければ分からないなんて重症だ。
最上くんに向かい合う形に居直り、電話に出なかった理由を嘘のない嘘で答える。

「ごめん。ちょっと足を痛めちゃって、それどころじゃなかったの。」

「何か見たんじゃないのか?」
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