理屈抜きの恋
「え?あ!えぇ?!そんなことある?ど、どうしてここに?まさか付けて来たとか?」

「人をストーカー扱いするな。全く失礼な奴だな。」

不機嫌そうに顔を歪めたけど、優しい目をした笑い方は本宮涼だ。
一晩中、脳裏に焼き付いて離れなかった人。仕事に支障が出るからと頭から追い出した人。

でも、こうして目の前に現れたら頭も心も一瞬で本宮涼に染まってしまう。

昨夜見た姿とはまるで違うし、なぜ社内にいて、さらに資料室にいるのかも分からないけど、その質問さえ口に出せないほど、一瞬で惹きつけられた。

「撫子、こいつ誰?」

最上くんが言葉を発したことで室内には私たちのほかに最上くんもいたんだと気が付いたけど、それほどまでに周りが見えていない自分に驚いた。

「撫子?」

「あ、ごめん。この人は…」

紹介しようと思い口を開いてみたけど、そういえば私、この人のこと、名前しか知らない。
黙っていると本宮涼自ら話し始めた。

「昨日、君が見た男はおそらく俺だよ。」

「え?だって全然…」
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