理屈抜きの恋
最上くんも見ていたなら同じ疑問を抱いてもおかしくない。
何せ髪型も髪の色もメガネも服のタイプもまるで違うのだから。
2人で答えを待っていると、本宮涼は一度フッと鼻で笑った。

「そんなに期待されても困るんだけど。昨日は友人の結婚式の余興のためにあんな格好していただけだから。こっちが普段の俺。」

余興でホストを演じるっていうそもそもの内容が気になるけど、様になっていた姿を思い出せば、あれはあれで素質があったのに。

「それで、どうしてここに?」

最上くんが聞くと、手にしていた冊子を元の棚に戻しながら、本宮涼が答える。

「俺、ここの社員だから。あ、詳しく言えば役員か。」

「「役員?!」」

突拍子もない答えに、最上くんと言葉が重なってしまうけど、そんなことお構いなしの本宮涼は私たちの方へと近づき、淡々と話しを続ける。

「今日は予定より早く出社したんだ。でも暇でさ。過去の帳簿でも見ようと思ってここに来たんだけど、正解だったな。面白いものを見ることが出来た。」

「もしかして、全部聞いていたんですか?」

最上くんのトーンがワントーン落ちた。
告白を聞かれたんだ。
気分が良くない事くらい、経験がなくたって分かる。
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