理屈抜きの恋
そう伝えたのに、疑り深い副社長は椅子から立ち上がり、私の方へと近付いて来て身を屈めた。

そして私の前髪をサラリと手で避けてから、おでこにおでこをくっ付けた。

「?!」

「確かに熱はなさそうだな。でも体調悪いなら今日は特に予定ないし、休んで構わない。帰るか?」

黙っているとおでこを離した副社長が呆れたような表情を浮かべて腕組みをした。

「おい。またかよ。最近は一回で聞き取れるようになったと思っていたのに。仕方ないな。もう一度言うぞ。体調、悪いなら帰っていい。病院にでも行って来い。」

「…。」

「おいっ!聞こえているのか?返事をしろ、返事を。」

「大きな声を出さないで下さいっ!ちゃんと聞こえていますから。」

「じゃあ、なぜすぐに返事をしない?」

「こっちが聞きたいですっ!なんですか、今の?!」

「何が?」

「熱の測り方、間違っていますよ!」
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