理屈抜きの恋
「腕だ。3度目はないぞ。」

先の方に見える受付に目をやれば同伴者の女性は男性にエスコートされている。
それに納得した私は、ぎこちない動きになりながらも副社長の左腕に自身の腕を回した。

「これでいいですか?」

「あ、あぁ。」

歯切れの悪い返答が気になり見上げると、顔がさらに赤くなっている。
エスコートするのなんて慣れていそうなのに。

「笑うな。」

「だって、こういうキザな感じ、普段からやりそうなのに。」

「本当に可愛くない女だな。じゃあ腕は組まないでいい。その代わり…。」

組んでいた腕が外され、どうするのかと様子をうかがっていると、腰に手が当てられ、副社長側に一気に引き寄せられた。

「ちょっと!?」

離れようとするけど、しっかり抱き寄せられてしまえば勝手な身動きは取れない。
それに、腰に当てられた手に違和感があってどうにも落ち着かない。

「変に離れようとするから落ち着かないんだ。もっと俺の方にくっ付け。」

「それは恥ずかし過ぎます!これ以上は無理です!笑わないから腕を組む方向で行きましょう!」
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