理屈抜きの恋
大体、副社長と秘書の関係がこんな風にくっついていること自体おかしい。
これなら腕組みの方がはるかにマシだった。
でも副社長は離してくれないし、副社長の容姿のせいでやけに注目を集めているし、もう限界だ。頭に血が上る。

「おい。大丈夫か?」

「全然大丈夫じゃないです。」

「素直だな。それならとりあえずあそこにいろ。俺は受付してくるから。」

「私も行きます。」

「いや、君は社長に挨拶するときに付いて来てくれればいい。それまでは飲み物でも飲んで待っていろ。」

手が腰から離れ、頭をポンと触られてニコリと笑われたら、またしてもドクンっと心臓が跳ねた。

もう本当になんなの?
どうしてあんな風に優しく笑ったり、触れたりするの?

今までは忙しくて必要最低限の会話しかしていなかったし、こんな風に接触することなんて皆無だった。
だから同じ部屋にいようが、行動を共にしようがこんな風にドキドキしたりしなかったのに。

「あーもう。わけわからないし、変な汗かいて喉渇いた。」

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