理屈抜きの恋
パッと手を出されて握手をするような形になったけど、鵠沼…って。


「今日のパーティーの?」

「そ。主催者の孫。涼と同じ立場だね。」

「本宮副社長をご存知なのですか?」

本宮涼が副社長に就任してまだ2ヶ月しか経っていない。
挨拶周りはしているはずだけど、名前で呼び合う程の仲はただの仕事関係者とは思えず、じっと見つめると、鵠沼さんは照れたように頭を掻いた。

「涼とは…大学の同級生なんだよ。」

「大学の…。あ!もしかして2ヶ月ほど前、某ホテルにいらっしゃいましたか?」

真美ちゃんの披露パーティーが行われたホテル名を出すと思い出したようにポンと一回、手を叩いた。

「結婚式で行ったよ。でもどうしてそれを?」

「ホスト役の本宮副社長をお見かけしたので。」

「アハハ。あれ見たの?スゲーハマり役だったでしょ?もう会場内の奥様方のハート鷲掴み!もしかして君も鷲掴みされちゃった?」

「いえ、私は…。」

鷲掴みされた、といえばされたけど、それはホストの副社長にではなく、優しさを感じさせてくれた副社長自身に、だ。
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