理屈抜きの恋
女性の視線に合わせるように床に膝をつき、尋ねるとコクリと小さく頷いた。
でも突然の流血に動揺しているのか、手が震えている。
肩に手を当てて背中をさすってあげると幾分落ち着いた。

「鼻を押さえたら気持ちを落ち着かせましょう。深呼吸です。そう。ゆっくり吸って…吐いて…身体を楽にしましょう。」

一緒にゆっくり深呼吸をして、鼻を圧迫する事5分。
手を離して貰ったら血は止まっていた。

「良かった。」

鼻の周りと手に付いた血を拭くようハンカチを渡すと「ありがとうございます。」と言って、ハンカチで鼻の辺りを隠し、部屋を出て行った。

それを見送り立ち上がる。
その直後、バランスが崩れた。

いつかのように副社長が支えてくれなければ、今度は私が流血騒動の発端者になる所だったと思う。

「すみません。」

「大丈夫か?」

「大丈夫です。ありがとうございます。」

副社長から身体を離したけど、なんだかフラフラする。
身体を支えるべく、側にある椅子の背に手をつくと、副社長が私の膝の裏に手を回し、ヒョイと抱き上げた。
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