「この顔見るのは“俺”限定」
はじめて見る黒繭が怖くて、目をそらす。



すると繭は、あたしの耳たぶを引っ張りながら、顔を寄せた。



「いい?
ありさ」



声と一緒に、黒い空気まで耳に流れ込んできた。



「月曜日の体育の持久走。
絶対絶対、転んでね」



……って。



「はぁ!?
なんでっ!?
あたし、そんなことできないよっ!」



耳たぶを引っ張られていることも忘れてのけぞった。


< 118 / 328 >

この作品をシェア

pagetop