恋の仕方がわからない
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あたしはもちろん、由香も谷口くんと悠斗先輩が兄弟だなんて知らなかったようであたし以上に驚いている。
「由香も知らなかったの?」
「もちろんよ。なんだって裕也とこいつが兄弟なんて…」
由香なんて大好きな裕也くんの前である事を忘れるレベルで慌てている。
「由香ちゃんも相変わらず毒舌だなー。そんなに俺の事嫌い?」
悠斗先輩のそのセリフに慌てる由香。
「そっ、そんなことないですよ!悠斗先輩にはお世話なりましたし!それに私が毒舌って何のことですかー、あはは」
張り付けた笑みを浮かべた由香の眉がピクピクしている。
「ふーん」
悠斗先輩は何かしら感づいた様でニヤニヤしている。
「もしかして、由香ちゃんと裕也って付き合ってるの?」
悠斗先輩の問いかけにポンッと赤くなる由香。
強気な由香のこんな顔が見れるのも谷口くん絡みだけ。
見ててほんと面白い。
「そうそう!昨日俺が告って由香にOKしてもらえて、これから一緒に帰る所。あ、もし良かったら笠原さんと兄ちゃんも一緒にどう?駅の近くのカフェに行こうと思ってるんだけど」
由香との付き合いを悠斗先輩に報告している谷口くんの笑顔は本物だ。幸せそうで何より。こんないい人と由香が一緒に居ればあたしも安心だ。
「ああ、駅の前のあそこか。俺まだ行った事ないんだよね。…でもせっかくのデート邪魔しちゃっていいの?」
「邪魔だよ」
さっきまで微笑んでいた由香があたしの背後で呟いていたのは誰にも言えない。