恋の仕方がわからない
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「ずっと覚えてるよ。会話の内容全部ね」
「え…?…ぇ、っと…」
目の前で一年前と変わらない無邪気な笑顔で笑っているはずの先輩。でもなんだか一年前と距離感が違うのは、先輩後輩になったから?
なんだかそれだけじゃない気がしてならない。
「ごめんね、困らせたかったわけじゃないんだ」
なんて返したらいいのかわからず焦ったあたしが困っていると思ったみたいで、先輩は困り顔をしてあたしの頭に手を伸ばした。
「っ……」
「あっ…ごめんね。つい…ほら奈子ちゃん、小動物みたいだからさ…あはは」
ほら。
なんだか距離感が違う。
あたしがうつむいていると先輩がため息をついた。
「ごめんね。やっぱり俺って子供だよなぁ……」
なんでそんな風に思ったのかはわからないけど、先輩は十分大人だと思う。
「先輩はすごい大人だと思います!むしろ…子供なのはあたしの方です…」
「ほら、また奈子ちゃんに気を使わせちゃった」
しょんぼりしてしまったあたしのためか、先輩は携帯を取り出して何かを見せてくれた。
「奈子ちゃん、これ見てみ?」
「え…?……ちょっ!ふふふっ…」
見せてくれたのは谷口くんの変顔。
「裕也には内緒な?」
なんて笑っている。
谷口くんには悪いけど、お腹が痛くなるくらい笑ってしまった。
あたしのいつになく大きな笑い声に由香と谷口くんがこっちを見ている。
笑顔で由香に手を振ると、安心したようでまた2人で話始めた。
「俺学校で思ったんだけど、由香ちゃん、裕也に猫かぶってるでしょ」
「先輩も気づきました?猫かぶってると後が辛いのに、由香馬鹿ですよね」
あたしがそう返すと先輩が頷いた。
「奈子ちゃんは俺の前で、素なのかな?」
「え!?そんな!もちろんですよ!」
びっくりして返すと先輩はニヤリとして言った。
「そうかなぁ…?」
「ほんとに素ですって!」
まあ、アニメが好きっていうのはもう伝えてあるし?男が苦手なのも知ってる。
ある意味一番あたしを知っている男子だと思うけど。
「そっかー。ならいいけどー」
おどけたように笑った先輩に釣られてあたしも笑ってしまった。