【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
「宗易、ではわしはどうすればい
いと言うのだ。今さら秀吉に許し
を請えと言うのか」
「私がここに伺いましたのはその
ことを申し上げたかったのです。
秀吉様は天下を自分ひとりのもの
にしようと考えてはおられませ
ん。多くの方々の力を合わせて天
下を治めようと考えておられま
す。秀雄様にもその一員になって
いただきたいのです。これは茶の
湯にも通じる考え方です。茶室に
集い上下の関係なく茶の湯を楽し
むのと同じことです」
「しかしそれでは家康殿を裏切る
ことになるではないか」
「いいえ。家康様にも一員になっ
ていただくつもりです。それには
まず秀雄様のご決断が必要なので
す」
 秀雄はしばらく考えて宗易に任
せることにした。
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