【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
 大勢の人でにぎわっている中、
上機嫌の秀吉がねねや側室などを
伴ってやって来た。そして黄金の
茶室の前で公家や諸大名らの出迎
えを受け挨拶を交わした。しかし
茶の湯の人気でいえば利休の茶室
に集まった人の数が上回ってい
た。それは利休が詫び茶を提唱
し、これまでの高値で手に入りに
くい唐物茶碗から庶民にでも買え
る瀬戸焼茶碗など質素な物の中に
美を見いだしたからだ。そのため
今まで高値で茶器をそろえた公家
などから茶器の値が下がったと恨
まれることもあったが、それにも
まして利休の名声は広まっていっ
た。
 秀吉はそんな茶の湯のことはど
うでもよく、庶民が今の世を極楽
だと思うように苦心した。
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