【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
小早川家の元家臣
筑前、名島城は博多湾に突き出
した小山の周囲に堀をめぐらせ、
天守、二の丸、三の丸、南丸を設
けた海城で、そんなに広くはない
が、水軍を率いた小早川隆景には
都合が良かった。
隣国の肥前、名護屋城も沿岸に
あるがその規模と豪華さには遠く
及ばない。
隆景が備後、三原に移ると決
まった時、ほとんどの家臣が共に
移ることを願い出たが、その一
部、五百人足らずの家臣が隆景の
命令で残された。その中には岩見
重太郎、曾根高光、神原基治がい
た。
岩見は軍学、剣術に長け、父の
敵討ちをする前に試し切りをした
という伝説の石が残っている。
曾根は金剛力で名を成してい
た。
神原は村に出没する馬に似た怪
物の尻尾の毛を手に入れたという
不思議な体験をし、その話しを書
いた馬妖記の作者という異色の経
歴がある。その話に登場する伊丹
正恒、穂積宗重、熊谷照賢、鞍手
正親、倉橋直行、粕屋常定も残さ
れていた。
小早川家の元家臣たちは秀秋一
行がやって来るというので迎える
仕度をして待ったが、誰も気乗り
していなかった。
(小僧のお守りなんぞ誰にでもで
きるわ)
秀秋が着いたと言うので出迎え
て見ると家臣の行列が延々と続い
ていた。それは秀秋の豊臣家から
の家臣に加え、秀次の一件で浪人
になった者などを召抱えた総勢一
万人の大行列だった。
行列には以前からいる山口宗
永、稲葉正成、平岡頼勝、村山越
中、篠田重英などの秀吉から任さ
れた家臣に加え、鉄炮頭の松野主
馬と蟹江彦右衛門、秀秋の実家で
ある木下家の親戚にあたる杉原重
治、稲葉の養子だった堀田正吉、
伊岐流槍術を創始した伊岐真利、
荒馬も乗りこなす村上吉正、怪力
で剣術にも優れた河田八助、剣術
で名高い柳生石舟斎の四男で秀秋
の警護役となった柳生宗章などの
逸材も家臣となっていた。
この人数の多さに小早川家の元
家臣たちは秀秋に反発する気も失
せ、唖然として立ち尽くした。
した小山の周囲に堀をめぐらせ、
天守、二の丸、三の丸、南丸を設
けた海城で、そんなに広くはない
が、水軍を率いた小早川隆景には
都合が良かった。
隣国の肥前、名護屋城も沿岸に
あるがその規模と豪華さには遠く
及ばない。
隆景が備後、三原に移ると決
まった時、ほとんどの家臣が共に
移ることを願い出たが、その一
部、五百人足らずの家臣が隆景の
命令で残された。その中には岩見
重太郎、曾根高光、神原基治がい
た。
岩見は軍学、剣術に長け、父の
敵討ちをする前に試し切りをした
という伝説の石が残っている。
曾根は金剛力で名を成してい
た。
神原は村に出没する馬に似た怪
物の尻尾の毛を手に入れたという
不思議な体験をし、その話しを書
いた馬妖記の作者という異色の経
歴がある。その話に登場する伊丹
正恒、穂積宗重、熊谷照賢、鞍手
正親、倉橋直行、粕屋常定も残さ
れていた。
小早川家の元家臣たちは秀秋一
行がやって来るというので迎える
仕度をして待ったが、誰も気乗り
していなかった。
(小僧のお守りなんぞ誰にでもで
きるわ)
秀秋が着いたと言うので出迎え
て見ると家臣の行列が延々と続い
ていた。それは秀秋の豊臣家から
の家臣に加え、秀次の一件で浪人
になった者などを召抱えた総勢一
万人の大行列だった。
行列には以前からいる山口宗
永、稲葉正成、平岡頼勝、村山越
中、篠田重英などの秀吉から任さ
れた家臣に加え、鉄炮頭の松野主
馬と蟹江彦右衛門、秀秋の実家で
ある木下家の親戚にあたる杉原重
治、稲葉の養子だった堀田正吉、
伊岐流槍術を創始した伊岐真利、
荒馬も乗りこなす村上吉正、怪力
で剣術にも優れた河田八助、剣術
で名高い柳生石舟斎の四男で秀秋
の警護役となった柳生宗章などの
逸材も家臣となっていた。
この人数の多さに小早川家の元
家臣たちは秀秋に反発する気も失
せ、唖然として立ち尽くした。