【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
 諸大名の部隊がしだいに肥前、
名護屋に集結し始めた。そして一
番隊の加藤清正、二番隊の小西行
長、宗義智、松浦鎮信らの部隊を
皮切りに次々と出港して行った。
 秀秋の出港が近づいた同年六月
十二日に小早川隆景がこの世を
去った。秀秋とは短い期間の父子
だったが備後、三原城で隆景が歓
迎してくれたことを思い出すと寂
しさが募った。
 正式に小早川家の家督を引き継
いだ秀秋は同年七月に出港が決ま
り、新造され日本丸と名づけられ
た軍船に乗り込んだ。
 日本丸を含む水軍は壱岐、対馬
を経由して朝鮮が目前というとこ
ろで朝鮮の元均(ウォンギュン)
が率いる水軍と遭遇した。
 いきなりの海戦に慣れない豊臣
家の元家臣たちは何もできない。
それとは対照的に小早川家の元家
臣たちは水軍で鍛えられた経験を
生かして冷静に対処した。やがて
豊臣家の元家臣たちも見よう見ま
ねで協力し始めた。
「おぉ、まさに呉越同舟だ」
 秀秋は家臣がまとまる兆しを感
じた。
 日本水軍の苦戦が続く中、藤堂
高虎、加藤嘉明、脇坂安治の率い
る水軍が現れ反撃を開始した。そ
して海戦で負け続けていた日本水
軍が善戦して初めて朝鮮水軍を撃
退した。
 こうしてようやく日本丸は朝鮮
の釜山港外に錨を下ろした。
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