課長と私

「んふふ~」

「……。」

「んふふふふふ!」

「何!?何その笑い方!気持ち悪いって!」


こっちを見ながら気味の悪い笑い方をする緩奈についつっこんでしまう。
いや、本当に気持ち悪い。美人だけど。

ランチでおしゃれなカフェまで来たのに緩奈がこのテンション。


「だってさぁ~、もうチャンスないかと思ってた藤崎とぉ、楓がぁ…んふふふ」

「ちょっと静かにしてよ!ってかそんなんじゃないってば…!」

「なんか、藤崎の気持ち知ってた私にとっては意外に嬉しいことなんだよねぇ…ちょっと応援してたし」

「そ、そうですか…。でも、本当そんなんじゃ…」


確かに先輩のことを一瞬でも忘れさせてくれた藤崎のことは少しだけ感謝している。

でも、だからこそ分かったことがあって。
やっぱり私は先輩のことが大好きなんだって。
先輩じゃないと、ダメなんだって。

もしそれで、先輩に断られたら。
そのときは、また考えようと思う。

先輩の家を離れて、もう3週間近い。
他の人にとってはなんでもない3週間だろうけど。

私にとっては先輩の大切さを知る大事な期間だった。


「緩奈…藤崎には感謝してるよ。もちろん緩奈にも。」

「うん……私は楓の気持ちを尊重するよ。答え、出たんだね」


私の様子から何かを感じ取ってくれた緩奈が、真剣に話を聞いてくれる。

これからどうやって先輩と会おう。
会って、そこからどんな話をすれば伝わるんだろう。

ほとんど毎日近くにいるのに話が出来ず、顔もうまく見れない。

好きなのに。言葉にして伝えられない。
見えない鎖のようなものに縛られている気がして。

でも、そこから1歩を踏み出せるように。
自分の気持ちを伝えるだけでもいい。

それだけでいいから。



私は、亮くんのことが大好きだ。



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