課長と私
「楓…」
「は…ぃ…」
「…ずっと傍にいて。」
「…え…?」
驚いて顔を上げた。
涙や鼻水でぐちゃぐちゃだったけど、そんなこと忘れていた。
「俺と…結婚してください。」
「結…婚……」
「…どう?」
答えなんて分かってるくせに。
聞いてくるその顔が私を試しているようで少しだけ悔しい。
「何で…っ」
「…ん?」
「何でこんな顔がぐちゃぐちゃな時にっ…言うんですかぁ…」
「えっ」
「プロポーズ…先輩がっ……こんなストレートに…っ」
訳が分からなくて嗚咽が止まらない。
最初は驚いていた先輩の表情が次第に和やかなものになってくる。
「楓、返事は…?」
優しく私の頭をなでるその手のぬくもりと、落ち着いた低い声が安心感へと変わっていく。
たった3週間近く離れていただけなのに。
こんなに寂しいものだとは思っていなかった。
だからこそ、もう離れたくない。
「よ…よろしくお願いします……。」
私の答えを聞いて少しだけ安心した表情になった。
「…すごい顔だよ。」
「ひっ…ひどい……全部先輩のせいなのに…」
「ごめんって……あと、先輩っていうの…もう禁止」
「そ…それはなかなか難しい…ような……癖になってるし…」
「だめ…頑張って直して。苗字一緒になるんだから」
「努力…します……」
正直プロポーズはもうちょっとムードのあるところや雰囲気を想像していたが
先輩があんなにストレートな言葉で思いを伝えてくれただけでも嬉しい。