課長と私
「それで…柳瀬さん、楓とは結婚なんて考えてたりしない?」
「も!もお…お母さん…そんなぐいぐいと…」
「はい。先日プロポーズさせていただきました。」
わたわたしている私とは真逆の対応。
スラっとそんな言葉が出てくるのがすごい。
「あらっ!楓!何で伝えないのよこんな大切なこと!!」
「やっ…あのですね…」
だって…先輩が会社復帰するまでヒヤヒヤしてたし…
プロポーズされたのも夢のようで…なんて言えないけど
「近々、楓さんのご家族に挨拶に向かう予定でした。……お許しいただけますか。」
「お、お願いします…」
お母さんの方へ改めて正座をし直す。
私も彼と一緒に頭を下げた。
先輩の印象はお母さんの様子から見て良いはず。
っていうか悪いところがない。
「まだダメです。」
驚いて顔を上げてしまった。
あんなに先輩に興味ありそうな態度だったのに…
「おかあさ…」
「まだダメ。……お父さんにお話しいただくまでは。」
「え…」
「わかりました。日を改めて挨拶に行かせていただきます。」
頭の回転の速い先輩は内容を理解し、私は置いてけぼり。
「私は大歓迎なんだけどね~こんなイケメンの息子が出来る日がくるなんて、夢のようだわ!前世で徳を積んだのね、前世の私ありがとう!」
「え、え、何を…どう…」
「お父さんにも認められないとね。頑張ってよ柳瀬さん?」
「はい。」
要は、お母さん個人的にはもう結婚はOKだけどとりあえずはお父さんにも結婚の挨拶をしに来なさいと…
ようやく話のシナプスがつながった。
「さっ、私はお風呂でも入ろうかしら!」
「えっ…やっぱり泊まる気なのね…」
「当たり前でしょ?着替え置いておいてね。」
「…はいはい。」