課長と私
ep.6

お母さんが緊急来日してから数日後。
荷物を順々に運んで、今まで住んでいた私の部屋はほとんど物が無くなっていた。

後は契約うんぬんだけかぁ…なんて思っていたころ。


「あの…部屋狭くないですか?私、服とか靴とか…いっぱいありますし…」

「そ?…狭くなったらもっと広いところ探すよ。」


考え方が違う。さすが成功者。
お休みなのをいいことにひたすらベッドの上でゴロゴロしている彼はいつまでも眠そうだ。


「ねぇ楓ちゃん。」

「はい。」

「今夜、ちょっとだけお洒落してね。」

「お洒落ですか?…了解です。どこに連れてってくれるんですか?」

「なーいしょ。」

「内緒って…。分かってますよ?今日は記念日ですもんね?ね?」

「んー。」


曖昧な返事とともに彼は目を閉じた。
この人は今度いつ目覚めるんだろうか。

彼は記念日を意外にもよく覚えてて、時には私が忘れているのも承知の上でプレゼントをくれたりする。

しかし、今回こそは覚えている。
今回の私は違うのだ。

遡ること1週間前。

来る記念日のために少ない友人のつてで男性に送っても幻滅されないプレゼントを一緒に選んでもらったりした。

少しだけ昔のことも思い出しながら。

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