課長と私
………。
「せ、先輩…あの、これ。良かったらどうぞ…」
「………。」
学生時代、久々に2人で会えたこともあり私のテンションは少しだけ舞い上がっていたと思う。
でも、ちょっと勢いだけで動きすぎたかもしれない。
「あ…えっと……」
差し出した青い小さな箱に包まれたそれは彼の手に収まることなく、ずっと私の手の中にあった。
差し出された本人は表情を変えずにそれを見続けている。
もしかして、いらない?
プレゼントとか重すぎる?
そうだよね、別に何か特別な日でもないし…私何やってんだろ…
「ご…めんなさい。やっぱ無し…っ!」
「何で?」
散々後悔した後、ひっこめようとした両手を掴まれた。
何でって…何でよ……
恥ずかしくて顔に熱がこもる。てっきり断られているものだと思ったのに。
「俺がもらっていいもの?」
「ぁ…はい。……で、でもっ要らない…かも。」
「開けていい?」
私の手から青い包みを取って頷く私を確認した後丁寧にラッピングをほどいていく。
一瞬だけ見た彼のキーケース。
糸もほつれていて色も濃いところと薄いところでまだらだった。
終いには誰が書いたのかなんとなく分かるような落書き。
どうしてそんな物をずっと持っているかはまだ聞けて無いが、この先も絶対必要な物だろうと私なりに考えて彼へのプレゼントとして送ろうとしていた。
そしてそのプレゼントを渡す日が今日このタイミング。
私自身、ずっと会えずに寂しかった。