課長と私

「キーケース…?」

「はい…あっ、あの要らないですよね、ごめんなさい!」


迷惑だっただろう。
まだそんなに親しくもない子からプレゼントだなんて。

しかも普段常に持っているようなものだし。
とにかく嫌な顔をされる前に。突き返される前に。

そんなことを考えながら彼にあげたはずのプレゼントを取り返しに行く。


「何で?」


また、何で。
奪い返そうとする私を交わすように動く。


「だって……」

「俺に、でしょ?」

「そう…ですけど…」

「もらう。」

「え」


先輩の口から出たのは意外な言葉で。
必死に奪い返そうとしていた自分の動きを止めた。


「俺のキーケース、今こんななの。」


ポケットから出したキーケースを改めて見てみると、あの時見た状態のままなんとか保っているように見えた。

落書きの犯人はたぶん、小さい子供…いとこかな?


「知ってたの?」

「…ちょっとだけ見えたことがあって…それで。」

「へー…」

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