課長と私
「ありがとう。」
「……あ、はい…どういたしまして。」
一瞬だけ見えた王子様スマイルは大切に心の中にしまおう。
こんな顔毎日見れたらいいなぁ…なんて
数年前の私はこんな感じで。
その数年前に渡したキーケース。
先輩は今でもまだそれを使ってくれたりする。
気に入ってもらっているのだろうか。
そんなことを思いながら、私は紳士服のお店へ行った。
もちろん先輩へのプレゼントを買うために。
「いらっしゃ……楓!!」
「久しぶりー秋穂。」
「どうしたの?私に会いに来たの?」
「それもあるけど、別件もある。」
「あー!先輩にプレゼント??楓んとこは長いねー…しかも幸せそう。」
私を見て嬉しそうにしてくれた秋穂は大学のとき、
私と先輩をめぐり合わせてくれた張本人。
大学を卒業してからは主に紳士服専門のバイヤーをやっているらしい。
「先輩そろそろ結婚しようなんて言ってこないのー?」
「あの…実はね秋穂」
「え!?まさか…その顔は…」
「へへ…」
「わっ…楓と、柳瀬先輩が…結婚!!おめでとー!!」
満面の笑みでギュウっと私を抱きしめてくれる。
ちょっと痛いけどそれも含めて嬉しい。
「結婚式、絶対呼んでよね!!私、楽しみにしてるから!」
「呼ぶ!呼びます!だから、今日はちゃんとお仕事しよ。」
「えー!どうしよう、すっごい嬉しい…!それじゃ気を取り直して…何をお探しでしょうかお客様。」
この子は仕事とプライベートのONとOFFの使い方がうまいと心から思う。