課長と私
「えっと、キーケースあるかな?」
「キーケースだったら…ここと、ここの棚だね。どれ買うか決まったら声かけてね。」
「うん、ありがとう。」
仕事モードオンの秋穂は一旦私から離れて店内を歩いていく。
商品に目を向けて、順々と見ていく。
全体的にやっぱり大人っぽい。
先輩がどれを持っても形になりそうだけどなんとなくこの色の方が好き…かなぁ…
1番右端にあった深い青のキーケース。
数年前私が渡したキーケースはその時のバイト代を地道にためて買ったものだったけど
今は懐に少しだけ余裕がある。
「楓、どう?うちにあるやつ全部かっこいいでしょ?」
「うんうん。どれもかっこいい!でも、なんとなくこれに惹かれるなぁ」
「お、先輩に似合いそうだね。ラッピングする?」
「うん。お願いしようかな。」
「了解。…じゃあちょっとだけ待っててね。」
そう言われて店内をゆっくりと見て回る。
今夜、いったいどこへ連れてってくれるのかな…
今までなんとなく過ごしてきた記念日もプロポーズされた今では期待度も高くなる。
彼が連れて行ってくれる場所は、今までに行ったことの無いところばかりで毎回新鮮だが、それよりも何よりも彼と一緒に同じ時間を過ごせることが私は嬉しい。
しばらくして、秋穂が私のところに綺麗に包まれたプレゼントを持ってきてくれた。
別れ際、今夜楽しみだねなんてそそのかされた。