課長と私
1時間もかからない頃目的地に着いた。
「ここ…ですか?」
「うん。ちょっと待ってて。」
「はい……」
何十階あるんだろうこの建物…
吹き抜けの頭上ばかり見ている私の近くにフロントから帰って来た彼が寄ってくる。
「あの…亮くん、ここは…」
「何度か取引先の人と来たことある。味は間違いない…あとは友達がここのスタッフやってる。今フロントにいる人。」
亮くん越しにお友達を確認。
フロントに立ってるだけあって、キリッとした表情。
私と目が合って軽く微笑んでくれた。
かっこいい人だな…本当に類は友を呼ぶっていうか…
「おぉ…お友達もすごいんですね……」
「今見とれてた?」
「え!い、いえ…見とれてません、かっこいいとは思いました。」
「それがダメって言ってるの」
小さくため息をこぼす。
「ごめんなさい…だって、亮くんの友達かっこいい人しかいないじゃないですか…」
「もう見ちゃダメ」
肩を強く引き寄せ強引にエレベーター前まで早歩きになる。
誰もいないエレベーター内できょろきょろしてしまう。
何か緊張してきたな…何でだろう。
ドアが開いて、目の前には高級そうなレストラン。
「ご予約の柳瀬様ですね。お待ちしておりました。」
さすがの先輩は顔が広い。そして慣れている。
こんなお洒落なお店人生で何度も来れないだろうなぁ…
私、場違いじゃないだろうか…
「楓ちゃん緊張してる?」
「なんか…緊張してるかも、です…」
「普通にしてていいのに。」
「亮くん…私…実は、あんまり持ち合わせが…」
「ん?要らないよ?」
「や…でも高そうだし…」
あまりお店の人に聞かれたくない内容だから小声で話す。
さっきから不安そうな私を優しく笑いながら話す彼は絵になる。
「ほら、料理来るよ?楽しんでくれたらそれでいいから。」
「そうですか…?んー…じゃあ…お言葉に甘えて。」