課長と私

「ごちそうさま。」


お母さんの弾丸トークを物ともせず、お父さんはよそられたご飯を完食した。
すぐに近くにあった新聞を読み始める。


「ちょっとー!お父さんも一緒に柳瀬さんとお話ししましょうよ。」

「…うん。」


返事はするものの視線の先は新聞の文字だ。


「あ、そうだわ!楓が好きなケーキ買ってあるの!食べる?」

「あ、えっと…」


私の返事を待たず席を立とうとする母に「あの。」と先輩の一声がかかる。


「今日、伺ったのは大切なお話しがあるからなんですが…聞いてもらえますか?」

「お、お願いします。」


席を立とうとしていたお母さんがもう1度席に座りなおした。
隣に座っていたお父さんも眺めていた新聞を折りたたんで一口お茶を飲んだ。


「改めて…柳瀬亮です。楓さんと大学の頃からお付き合いさせていただいてます。」


お母さんの口元が緩んでいるのがわかる。
嬉しそうで、これから話すもう一つの話を聞いてもそのままでいてくれるのかが怖くて不安だ。


「大切な話というのは、楓さんとの結婚のお許しをもらいたいということです。」

「私は大賛成なんですけどね!…お父さんはどう?」

「……。」

「お父さんってばー…楓がこんなかっこいい人連れてくるなんてもう二度とないかも知れないのよー?」

「お母さん…それどういう…」

「…話は、それだけか?」


今まで黙っていたお父さんが口を開いた。


「いえ…もう一つあります。」


彼の言葉にお母さんはきょとんとしている。
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