課長と私
「ちょっと!!いいところだったのに何やめてんだよバカ兄貴!!!!」
「うるさい。お前に見せるものじゃない。」
「はぁ…ったく。大人のキスってもんを学びたかったのに…」
とことこと部屋に入ってくる。
私を離して近くへ引っ張る。
「うわ……めちゃ可愛い。」
「ど…どうも。」
「弟。雅人。…ばか。」
「何だよそれ。俺の紹介それだけ!?…帰って来たと思ったら結婚かよ。」
雅人くん…
先輩の高校生版…かわいい。
身長がすでに私以上にありそうだ。
黒の短髪で一見高青年そうに見えるが、百合さんの話を聞く限りには女の子にだらしない…。
「あのっ、俺年上の女性大丈夫なんですけど、どうですか?」
「へ!?あ、あの…えーっと」
「楓ちゃんまともに返さなくていいから…。」
「楓さんっていうんですね、俺雅人っていいます!バスケやってます!高3です!」
「よ、よろしく…ね」
わ、若い…眩しい……
「用がないなら早く部屋に戻れよ。」
「んだよ、久々の再会だろ??兄ちゃん帰って来ない間、あの女たちにどんな目に合ってたと思ってんだよ!慰めも無しかよ!……東京の家、連れてってくれるって言ったのに…」
「…悪かったって。」
小さなため息をこぼす。
家を出るとき、約束をしてきたみたいだ。叶えられてはいないようだが。
「楓さん、今からでも遅くない。俺にしときなよ。」
「あー…あのね、雅人くん…」
「子供が出来た。…楓は渡さない。お前でもダメ。」
不覚にも今の言葉できゅんとしてしまった。
私のリアクションとは反対に、目の前にいる雅人くんは茫然としている。