課長と私
「うるせーな、俺も楓ちゃんみたいな女の人と結婚したいなぁ。」
「はいはい…」
「楓さん。いつでも帰ってきて良いから。…不安なことがあったら電話してきなさい。」
「はい…。ありがとうございます。」
「亮。楓さんを大切にな。」
「分かってる。父さん、母さん、また帰ってくるよ。」
亮くんがそう言って窓を閉めた。
ルームミラーにうつる皆の姿を目に焼きつけ、持たせてくれた飲み物を一口飲んだ。
「雅人がうるさくてごめんね。」
「いえいえ。高校生ですもん。…亮くんもあんな感じでしたか?」
「…そうみえる?」
「そう…じゃないことを願ってます。」
雅人くんみたいにやんちゃな亮くん…………
だめだ。想像できないし、しちゃいけない気がする。
「式、出来そうで良かったね。…姉さんにそんな知り合いがいるなんて知らなかった。」
「そうですね、本当…嬉しい。亮くんは何でも似合いそうですね。」
想像するだけでニヤニヤしてしまう。
「そ?まぁ…男はスーツがちょっとオシャレになるくらいだからね。…楓ちゃん何色のドレスが着たいの?」
「へ?…あ、考えてませんでした……そうだなぁ、やっぱり王道の白は外せないですよね。」
「うん。…似合いそう。」
お……
なんか初めて言われたような…あれ、何回目かな……あれ、あれ……
貴重な誉め言葉に記憶を遡る。