課長と私
「具合、大丈夫?コンビニ寄ろうか?」
「今のところ大丈夫ですよ、ありがとうございます。…もうちょっとで家ですよね、いけます!」
「我慢しなくていいからね。…ほら、席倒して寝てて。」
そっとリクライニングにしてくれる。
亮くんの運転は安心できるし、目を閉じると眠気がどっと押し寄せた。
―――…………。
「……楓ちゃん。」
「…ん。」
「駐車場ついたよ。…起きれる?」
「は…すいません、私…」
いかん。全然記憶がない。
寝てしまった……
「いいよ。ずっと緊張してたんでしょ…。帰ろうか。」
「…そうですね。我が家に帰りましょうか…」
鍵を開けて、中に入ると部屋中に彼の香りが広がっていた。
何か…安心するな…
「んー…疲れたぁ…」
「お疲れ様です。何か飲みますか?」
「コーヒー……あ、いいよ楓ちゃん、俺やるから…」
「いいですよ、これくらいできますって。」
「そう?……ありがと。」
ラフな恰好に着替えた彼はソファにぐったりだ。
私もだけど、亮くんもずっと緊張状態にあったに違いない。
特に自分の実家では尚更。
「どうぞ。」
「ん。」
寝転んでいる亮くんの隣に座りテレビをつける。
あぁ、ほっこりする。いつも通り、だ。
「亮くん、お疲れ様です。ありがとうございました。」
柔らかそうな少し茶色がかった髪を撫でる。
私の手に気づいて起き上がってくる。
「……もっと撫でて。」
「ふふ…」